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PROFILEⅡ

後編に続きます。

「聴く」ことを技芸として捉え、対話の楽しさを噛み締めながら働いていましたが、

やはり手を動かしながらの創作活動を捨てきれない感情が燻っていました。


仕事も落ち着き、余裕ができた事で仕事以外の時間で何かを身につけたいと思うようになります。

そこで再び花を選んだのは、花の持つ「時間」について着目したからでした。

話を聞く事で対象者に与えるものは時間だと感じています。


ゆっくりと内面を見つめる時間を持ってもらう事で、立ち止まる事が出来る、その時間こそが大切です。

ある意味、聴くという行為を言い換えれば時間芸術ではないかとも思うのです。

それと同じ括りで考えれるのが花でした。


花も同じく時間を人に与えてくれます。花は自らの命を持って季節の移り変わり、時間の有限性を伝えてくれます。

巡りゆく時間のサイクルである円環的な時間軸、枯れてしまうと元には戻らない儚さを抱えた直線的な時間軸。

この2つを同時に有しており、それを私達に実感させてくれるのが花なのです。

聴く事と花はとても近い場所にあるものだと思いました。



そして私はいつか話をじっくり聴いて、その人の為だけの花束を作る花屋をしたいと思い描くようになります。 休日は花屋に出向き、実際に仕事をさせてもらうことで技術習得に充てました。



その頃、本業ではキャリアを積み、管理職に就きました。ただ、正直ずば抜けた成績を残していた訳ではなく、私がなる理由の一部に「男性だから」というのもあったと思います。そこに自分の中では痼りを感じていました。

宝飾品販売の世界では皆さんのイメージ通り女性の割合が圧倒的に多く、離職率が高いイメージもあるかもしれません。

土日勤務のシフト制で夜が遅い。ライフコースと照らし合わせた時に、このまま続けても良いものかと悩む人が実際に多かったです。

幸いにも主体性を持って仕事に取り組んでくれる方が多く、仕事におけるやりがいを求めている方たちばかりでした。


非常に優秀な方たちだったのと同時にその分、結婚を境にして悩む機会もまた多かったのです。

結婚し、子供が出来、復帰したらやがて土日仕事に切り替え、自宅にいる時間が増える。

もちろんそれも素晴らしく幸せな事ですが、少なくとも私の周りにいる方達は違いました。


仕事に誠実であればあるほど苦しみます。自己実現をまだ目指したい、しかし結婚も目の前にある。この先どんな人生を歩むのか、不安も大きいように感じました。


結婚というものがよぎる時はある意味で孤独です。

人と一緒になるには自分と相手との距離を測る必要がある。必然的に内に向かう時間ができるものです。

それが実際に結婚をするという場面がまだ訪れていない人でも意識した刹那に、やはり孤独を感じるのではないでしょうか。

核家族も増え、個としての生き方や価値観が増えてきたこの時代。

結婚してもしなくとも孤独を抱え込むことが多いように思います。個人との対話の延長に社会的な課題も感じつつ、

私はもっと聴くことを用いて誰かの一助になれないかを突き詰めたいと思いました。

今まではあくまで販売員、マネージャーという役割があり、その職域を上手くはみ出す事で聴くという効力が働いていたと思います。


もう少し聴くことを真ん中に置いた、ケアを中心した現場に従事したいと思うようになります。

選んだのは障害福祉への転職でした。 私は仕事を辞め、自立生活訓練と就労移行支援の多機能型事業所で勤務する事に。



未知の領域でしたが、皆さんとにかく優しく、繊細な方たちでした。ここでも対話を通しながら考えていた事は、

関わった皆さんがより生きやすい社会になるにはどうしたら良いのだろうという事です。 場所は違えど、苦しむのは社会の慣習や文化と自分とを照らし合わせたときだと感じました。


自分が間違っているのか、特殊なのかと悩む中で感じるのはやはり個である事を見つめた先にある孤独ではないでしょうか。

私はこの個人で生きる社会になりつつある日本で、誰しも特別な人がいて、誰かの特別な人であるという繋がりを

回復させることが大切なのではないかと思いました。


そう感じた時、花束を単に贈るのではなく、確かに繋がっていた、

繋がっているという実感を残すために、花束を作る為にじっくり聴いた内容を手紙に纏め、

花束と一緒に贈るという形を思い付きました。




すぐには変わないこの社会で、その上で個人としてどう引き受けていくのか。

孤独を感じたときに、花を贈りたい人を思い浮かべてみてください。

きっと花束を贈りたいと思う人は、あなたにとって特別な人です。



RICCAはオーダーメイドの花屋です。送り主とフローリストの対話の記録を手紙に纏め、花束と併せて贈ります。

なぜこの花束になったかを伝える為です。

また、絵画をアフターブーケとして残す事が可能です。お気軽にご相談ください。




記事制作者 大脇 勇人


profile


大学で美術デザインを学び、芸術療法に関心を持つ。

卒業後、冠婚葬祭の花屋を経て、宝飾品ブランドに勤務。

嗜好品を求める行為を通して、社会の課題やの個人の心理について考究する。

その後は障害福祉事業所へ入職しながら、「聴く」事について探求。

オーダーメイドの花屋 R I C C A を始める。




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